高級腕時計の代名詞であるロレックスは、中古市場で定価以上の価格で取引されることも珍しくありません。なぜこれほどまでに高値が付けられやすいのか、その背景には高級腕時計ブランドとしての顔だけではなく、高い実用性を実現する品質、緻密なブランディング・経営戦略、そして世界的に認められた資産価値の3つが主な理由といわれています。本記事では、ロレックスが時計の王様として君臨し続け、その価値を高め続けている秘密を詳しく解説します。
目次


実用時計の最高峰としての高い品質
ロレックスは素材から自社一貫生産(マニュファクチュール)することにこだわり、実用時計としての完成度を高めています。長期間の使用に耐えうる信頼性を生み出すための高い開発・製造コストをかけて、厳格な検査をパスした個体だけが市場に流通します。
・腕時計のスタイルを確立した三大発明の功績
ロレックスの歴史は、腕時計の機能を飛躍的に向上させた3つの発明と共に語られることが多いです。
オイスターケース…1926年に世界初の完全防水性を搭載した腕時計として開発され、湿気やホコリなどからもムーブメントを守ることで耐久性を上げています。
パーペチュアル…1931年に世界初の自動巻機構を持つ、特許取得のパーペチュアルローターを開発しました。その後の自動巻ムーブメントに影響を与えたとされており、時計の歴史に残る開発です。
デイトジャスト…通常、0時近くに徐々に日付表示が切り替わる機構ですが、デイトジャストはその名の通り、0時ジャストに日付が切り替わります。その後シリーズ名にも採用され、ロレックスを代表するコレクションとして今も愛されています。
・クロノメーター認定に裏打ちされた精度
ロレックスは創業当初から精度の追求にこだわっており、1910年には腕時計として初めてスイスクロノメーター認定を取得しました。現代においても精度の高さや生産地を認めるものとして高い権威性をもっており、ロレックスは全てのモデルをスイスクロノメーターが認定されています。
・独自素材「904Lオイスタースチール」へのこだわり
外装の素材、つまりケースやブレスレットに使われている素材にも強いこだわりを見せています。一般的に高級時計に使用されるステンレススチールよりも耐食性と強い輝きをもつ904Lオイスタースチールを全てのスチールモデルに採用しています。製造工程の中で顕微鏡での検査を行い、機械加工前に不純物を取り除くことで、高い性能を確実に引き出すことに成功しています。
・マニュファクチュールへの強いこだわり

ロレックスは各部品、素材に至るまで自社で開発し一貫して生産を行うマニュファクチュールへの強いこだわりをもっています。たとえば心臓部を司るひげぜんまいをつくることのできるメーカーは世界でも一握りですが、ロレックスはその一社です。
今では自社製ムーブメントは珍しいことではありませんが、ロレックスは早い段階からマニュファクチュールへのこだわりが強く、2000年にコスモグラフデイトナに搭載されているCal.4130を開発したことで、全てのモデルが自社製ムーブメントを搭載しています。
・数世代にわたり使用可能な堅牢性
機械式時計はメンテナンスを欠かさなければ数十年と使うことができますが、ロレックスは特に堅牢性を意識しているとされています。製造から何十年と経っているヴィンテージモデルが何十万〜何百万円で取引されていることからも、長く使うことのできる時計としての信頼性の高さを物語っています。
何十年経っていても修理が可能な部品供給のアフターサポートや、機能が少ないことによる長くメンテナンスできる機構の明瞭さから、ロレックスはハイブランド品でありながら修理しやすい時計と言われています。コロネットと呼ばれる王冠のブランドロゴは、一説には職人の手を表しているともされており、ロレックスの時計が道具としての面も大事にしていることを表しているのかもしれません。
需給バランスの不一致と緻密なブランド戦略
流通量を抑え、安売りを許さない徹底したブランド管理が、希少価値を極めて高い水準で維持しています。この環境が中古市場における定価超えのプレミア価格を加速させています。
・供給が追いつかない品薄状態の常態化
ロレックスの時計は高い品質と厳格な検査体制ゆえ、限られた職人による手作業の工程が多く、大量生産ができません。近年は世界規模で需要が爆発的に増加した一方で供給量が足りておらず、正規品の入手が極めて困難な状況です。巷ではロレックスを求めてさまざまな正規店を訪問し続けることをロレックスマラソンと呼んでおり、特に人気の高いスポーツモデルの入手は困難を極めます。
しかし、ロレックスは2024年より購入制限を設けています。モデルを問わず一人1本、購入後6ヶ月間はどのモデルも正規店での購入はできなくなっています。同じ品番は1年間の購入制限がかかります。一部のプロフェッショナルモデル(ステンレスのコスモグラフデイトナ、GMTマスターⅡ、サブマリーナー)は6ヶ月ではなく1年、かつ同じ品番の購入は5年間不可と厳しい制限を設けています。
これによって、以前よりは購入しやすくなったとの声もあるようです。転売目的か、偏ったユーザーに購入されていたのが少し解消されたのかもしれません。
・ブランド価値を守る安売りをしない価格統制
ロレックスはブランドの品格を守るため、正規販売店では一切の値引きをしていません。アウトレットやセールもありません。安売りをしないという断固たる姿勢は、流通量をいたずらに増やさないことにより値崩れを防ぎます。中古市場においても同様なため、ロレックスは価値の下がらないブランドとして定着しています。
・プロフェッショナルの偉業に寄り添うブランディング
ロレックスは戦略的なブランディングとして、エベレスト登頂や深海調査など、各分野のプロフェッショナルたちの偉業に時計を同行させています。
1927年にメルセデス・グライツ氏が、オイスターを着用してイギリス海峡を泳いで渡ったことで性能を証明しています。1953年にはエクスプローラーの前身モデルをエベレスト山頂に到達したサー・エドモンド・ヒラリー氏とテンジン・ノルゲイ氏を含むイギリス遠征隊に着用してもらい、エベレストであっても問題なく使えることを証明しました。
プロフェッショナルを通して知れ渡った耐久性により、成功者の時計や腕時計の王様といったステータスを確立したことが、今日のロレックスを作り上げていると言っても過言ではないでしょう。
・世界的な経済状況とeコマースの発展の影響
近年の価格高騰には外部環境も強く影響しているとされています。新型コロナウイルスの影響による行動制限により、レジャー消費から高級嗜好品へとシフトしたとされており、不安定な外貨として所有するくらいなら、安定的な資産としてロレックスが選ばれたとも言われています。そうした投資アイテムとしての購買も相まって、需要が爆発したとされています。
eコマースの普及も需要が拡大した一因です。従来では対面販売が基本だった高級時計ですが、高画質な画像や動画、SNSの普及により、オンラインでの売買が活発になりました。遠方のユーザーでも容易に市場にアクセスできるようになり、多くのユーザーが高級時計を買いやすくなったことも、需要を後押ししています。
・ブランド自身が参入した認定中古の衝撃
2022年にはロレックス自身が中古品の真正性と品質を保証する認定中古プログラムを開始しました。初回販売より2年以上経過した中古モデルの真正性を保証し、「Rolex Certified Pre-Owned」という特別なプレートを掲げた正規品販売店で販売されるものです。
中古品というと価格が安かったり正規販売が終了したモデルが入手できる代わりに本物なのかの判断が難しいリスクがありますが、これはロレックスがそれを証明するものです。中古市場への流出による価格暴落を防ぐようなねらいがあると言われています。
腕時計の枠を超える高い投資価値
いつでも売れるという圧倒的な換金性と、長期的に右肩上がりの相場を形成してきた実績がロレックスを投資対象としても押し上げています。特にステンレススチールのスポーツモデルは、高い資産価値を維持しやすい傾向にあります
・購入時以上の利益を生むロレックス投資の台頭
ロレックスの人気モデルは中古市場の実勢相場が定価の数倍に達することもあります。そのため、最初から売却益を目的に購入するロレックス投資という言葉が生まれるほど、投資の対象として注目が集まっています。
前述した通り正規店での購入は困難を極めますが、購入できた瞬間に含み益が発生するほど。こうした特異な市場環境がさらに需要を呼んでいます。
・即座に現金化できる圧倒的な流動性

ロレックスの資産としての最大の強みは、売りたい時にいつでも適正価格で売却できる流動性の高さです。世界中に買取専門店やオークション市場が存在し、モデルごとの相場がリアルタイムで公開されることで、現金に近い感覚で保有できます。他のブランドにはないロレックスだけの優位性です。
・経済不安やインフレに強い実物資産としての力
ロレックスは、歴史的な金融危機の局面でも価値が目減りしにくく、長期的には右肩上がりの相場を形成してきた実績があります。インフレ下でも価値を維持しやすく、資産を分散する意味でも投資家からの評価が高いとされています。
・資産価値が特に落ちにくいスポーツモデルの強み
全てのモデルが同じだけ高騰するわけではありません。特にコスモグラフデイトナ、サブマリーナー、エクスプローラーなどのスポーツモデルは人気が高く、中古市場で高い人気を誇ります。これらのモデルを正規店で購入できた際には使うのか、すぐに売却するのか、数年保管してから売却するのか、ユーザー次第です。
・ステンレスモデルが貴金属モデルより高騰する理由
投資対象というとゴールドやプラチナなどの貴金属モデルが高いイメージをもつかもしれませんが、意外にもステンレススチールモデルのほうが価値が安定・上昇しやすい傾向にあります。
これはゴールドやプラチナといった素材の価値ではなく、ロレックスの人気モデルとしての価値が高いためです。たとえばサブマリーナーは投資対象としても、実際のユーザーとしての人気も高く、そのどちらからも需要があるからといえます。
・生産終了(廃盤)に伴うプレミア化
ロレックスは定期的にモデルチェンジが行われており、人気モデルであっても生産終了になるケースもあります。生産終了となったモデルは、市場に出回っている個体数が増えないため、相場が急騰するプレミア化が起こりやすくなります。
モデルによってはプレミア化を待ってから売却すべく、購入後に一切使わずに保管しておくコレクターもいるとか。ただし、意外にも実際のユーザーも多いステンレススチールモデルが実勢相場に影響を与えるケースも多いため、プレミア化を狙うのが難しいケースもあります。
たとえば、サブマリーナーデイトの緑板、いわゆるグリーンサブは、以下の3モデルが存在します。
Ref.16610LV…2003年〜2010年に製造されたグリーンベゼル、黒文字盤モデル。
「カーミット」の愛称で親しまれています。
Ref.116610LV…2010年~2020年に製造されたグリーンベゼル、グリーン文字盤モデル
「ハルク」の愛称で親しまれています。
Ref.126610LV…2020年発表の現行モデル。グリーンベゼル、黒文字盤モデル。
「スターバックス」の愛称で親しまれています。
しかし、Ref.126610LV発表時にRef.116610LVのグリーン文字盤が人気が高かったため、中古価格が高騰しました。人気のグリーン文字盤が手に入らなくなってしまうと分かり、中古価格が急騰したのです。
つまり、人気のあるモデルだから、あるいは貴重なモデルだから、といった基準でプレミア化を予想するのは難しく、日々人気の高さと新作情報などをチェックする、さながら投資家のような情報収集が必要になります。
まとめ
ロレックスが高い理由は、世界的に信頼されているクロノメーター検定の認定やマニュファクチュールブランドとして積み上げられた長い歴史に裏打ちされた品質、徹底した管理による圧倒的な希少性、そして世界的に認められた資産としての流動性が理由と言われています。世界中で高値で取引され続け、いざという時には高い価値で換金できる一生ものの資産であることがロレックスの価値を高めています。
市川 雄麻
リユース業界で15年以上査定業務に携わり、1万件以上のブランド品・ジュエリー・時計・古着など幅広いジャンルの査定を経験。
市場相場や商品の状態、流通状況などを踏まえた査定を心がけており、買取に関する情報の監修も行っている。