みなさんは着物に格があることをご存知でしょうか。着物の格とは、着物の格式や用途に応じた種類を示す重要な概念です。着物は、そのデザインや装飾、使用される生地によってさまざまな種類に分かれ、それぞれの格によって着用する場面や用途が異なります。例えば、結婚式や公式な場で着用される第一礼装から、日常的に着るカジュアルな普段着まで、着物の格は多岐にわたります。
本記事では、着物の格について詳しく解説し、その種類や見分け方についても紹介します。
格とは何か?
着物には格という場面ごとにあった着物を着る、という文化があります。例えば、お葬式に行くときは一般的にスーツや学生服で参加をすることが多いでしょう。洋服にTPOがあるように着物にもTOPが存在します。
このような例が着物にも当てはまり、場に合わせて着物の格を選択する必要があります。着物の格は大きく分けて以下の4つに分類することができます。
- 礼装着(第一礼装)
- 略礼装着(準一礼装)
- 外出着
- 普段着(街着・浴衣)
上から順に礼装着、略礼装着、外出着、普段着となっていて礼装着が一番格が高く、普段着は一番格が低い(着こなしやすい・着やすい)服装となっています。
格の種類について
着物には大きく分けて4つの格(礼装着、略礼装着、外出着、普段着)があります。次はそれぞれの格にどのような違いがあるか、どの場面で使用するかを説明していきます。
礼装着(第一礼装)
礼装着は特別な式典や公的な儀式で使用されます。具体的には結婚式や成人式、卒業式で着ることが多い格となっています。
打掛(うちかけ)
結婚式で花嫁が使用する衣装です。白無垢(内側に着る着物)と打掛(上に羽織る着物)で構成されていて、全体的に白い衣装となっています。白以外にもピンクやオレンジなどの色の入った衣装もあり、鳳凰や鶴など縁起の良い模様が描かれています。
黒留袖(くろとめそで)
黒留袖は結婚している女性が着る着物の中で最も格が高い着物となっています。結婚式で新郎新婦の母や親族が着用することが多いです。こちらも結婚式などで使われることが多い衣装ですが黒留袖は格が高いので使用する人は近しい親族などに限定されます。友人の立場で結婚式に行く際は黒留袖よりも格が低い訪問着や色無地などの着物で行くと良いでしょう。黒留袖の衣装は両袖、両胸、背中に五つ紋が入っています。
本振袖(本振袖)
現代で本振袖は成人式で着られることが多い衣装となっていますが、正式には黒留袖とは対照的に未婚女性が着る着物の中で最も格が高い着物となっています。華麗な絵羽模様と長い袖が特徴的な衣装で袖は長ければ長いほど格が高いとされています。振袖にも大振袖、中振袖、小振袖がありそれぞれ袖の長さが異なっています。成人式では大振袖が使用されることが多く、卒業式など袴と合わせて使う場合は小振袖を着ることが多いです。
喪服
喪服は葬儀の場など喪の席で使用される格の高い着物です。従来では喪の席以外の行事でも使用されていましたが現代では葬儀が主な使用例となっています。衣装は黒紋付というもので、光沢の無い黒地の生地に五つ紋が付いた着物となっています。
略礼装着(準一礼装)
略礼装着(準一礼装)は、礼装着と普段着の中間に位置する着物で、ややカジュアルな場面や改まった場で着用されます。略礼装着は、結婚式や公式な場ほどの格式は求められないが、それでもきちんとした装いが必要な場合に適しています。フォーマルな着物なので一着持っていると便利かもしれません。
訪問着
訪問着は、着物全体に連続した柄が施される「絵羽模様」が特徴の着物です。この柄は、着物を仕立てた際に繋がるように描かれており、一枚の大きなキャンバスに描かれた絵のような美しさを持ちます。訪問着は、袖から裾に豪華な模様が施され、華やかな印象を与えます。訪問着は結婚式や披露宴、茶会、入学式、卒業式など幅広い行事で着ることができます。場にふさわしい訪問着を選ぶことで、周囲に対しても敬意を示し、自身の品位を保つことができます。
付下げ(つけさげ)
付下げ(つけさげ)は、訪問着よりも控えめで訪問着に次ぐ格の着物です。付下げは、柄の配置が訪問着ほど豪華ではなく、シンプルで上品な印象を与えます。着物の各部分に柄が施されている着物で、柄が上下に連続しないのが特徴です。訪問着のように縫い目を跨いで柄が繋がるわけではなく、それぞれの部分に独立した柄が配置されています。訪問着と同様に結婚式や披露宴、茶会、入学式、卒業式など幅広い行事で着ることができます。
色留袖(いろとめそで)
色留袖は、格式のある場面で着用される着物でありながら、黒留袖ほどの堅苦しさはなく、少し柔らかい印象を持つ装をしています。色留袖は、主に結婚式などの公式な場面で着用されることが多い着物です。黒留袖に次ぐ格式を持つ着物として知られており、色とりどりの美しいデザインが特徴で、礼装着ほど格が高くないので、イベントごと全般に適している着物となっています。
色無地(いろむじ)
色無地はその名の通り、無地の生地が一色で染められており地模様が施されることが多いです。紋を入れることで格式が高まり、様々な場面で着用されます。色の選び方や紋の有無によって、カジュアルからフォーマルまで幅広く対応できるのが特徴になっています。特に、紋を入れることで礼装としての格式が高まり、正式な場でも着用できます。色無地はシンプルなデザインな物が多いので、お茶会で着用される場合が多いです。
外出着
外出着は、日常生活の中での外出や少し改まった場面での装いとして用いられる着物です。外出着は、普段着よりも華やかでありながらも、礼装ほどの格式は求められないため、幅広い場面で活躍します。これらの着物は、普段着よりも華やかでありながら、訪問着や礼装ほどの厳格さは求められておらず、外出着には季節やシーンに応じた様々なデザインや素材があります。
小紋
外出着の中でも、小紋(こもん)は特に人気があり、全体に細かい模様が繰り返し描かれている型染めの着物です。柄は一見ランダムに見えることもありますが、実際には規則的に配置されています。この特徴により、小紋は華やかでありながらもカジュアルな印象を与えます。素材やデザインのバリエーションが豊富なので、自分の好みの着物を見つけられるでしょう。小紋の格はすごく軽い物と扱われるので、友人との食事や観劇などに最適な着物です。
付下げ小紋
付下げ小紋(つけさげこもん)は、付下げと小紋の特徴を併せ持つ着物で、付下げよりも格が低く、小紋よりも格が高い着物となっています。着物の柄は顧問と同じく細かい模様が繰り返されている型染めの着物ですが、すべての柄が上を向いていることが特徴です。
紬(つむぎの外出着)
紬(つむぎ)は、カジュアルな外出着として人気のある着物で、手織りの風合いや素朴な味わいが特徴です。紬は、日常の外出や趣味の集まりや食事会など、幅広い場面で活躍します。絹糸を使って手織りされた着物で、その独特の風合いと温かみのある質感が魅力です。地域ごとに異なる技法やデザインがあり、各地の伝統や文化を反映されているところも魅力の一つとなっています。
絞り
絞りは、日本の伝統的な染色技法の一つで、布を絞ったり縛ったりして染料を染み込ませることで、複雑で美しい模様を作り出します。絞りは、布を部分的に絞って染色することで、独特の模様と風合いを生み出す技法です。この技法により、一点一点が手作りであり、それぞれ異なる模様が楽しめます。一つ一つ職人が作成することで手間がかかり、現代では絞り=高価な着物であるというイメージが定着しています。
普段着
着物の普段着は、日常生活で気軽に着用できる着物です。普段着の着物は、リラックスした装いでありながらもおしゃれを楽しむことができます。素材やデザインがシンプルで扱いやすく、手入れも比較的簡単なものが多いです。
紬
紬は普段着として人気がある着物で、その手織りの風合いや独特の質感が魅力です。古くから庶民の普段着として親しまれている着物です。紬は主に絹糸を使って手織りされる着物で、節糸(ふし)と呼ばれる不規則な糸を使用することで、独特の風合いと質感を生み出しています。手作業で織られるため、温かみのある素朴な印象を与え、普段着として非常に人気があります。
絣
絣は、先に染めた糸を使って織り上げることで、独特のぼかし模様や斑点模様を生み出す技法です。糸を部分的に防染してから染めることで、織り上がる際に模様が現れる仕組みになっています。絣は、日本各地でさまざまな種類があり、地域ごとに独自の技法やデザインが見られます。
ウール
ウールの着物は温かさと快適さを兼ね備えており、特に冬の寒い季節に重宝されます。羊毛を素材とした着物で、その保温性と柔らかさが特徴です。比較的扱いやすく、手入れも簡単なため、日常的に着用する普段着として広く愛用されています。ウールはシンプルなデザインからカラフルなものまで、さまざまなバリエーションがあります。
浴衣
浴衣(ゆかた)は、着物の中でも特にカジュアルで、夏の普段着として非常に人気があります。現代人に最もなじみがある着物かもしれません。軽くて涼しい素材が特徴で、花火大会や夏祭り、屋外イベントなどでよく見かける着物です。
浴衣は、主に夏に着用されるカジュアルな着物で、その起源は平安時代にさかのぼります。当初は貴族が入浴後に着る湯上がり着として使われていましたが、時代を経て、現在では夏の風物詩として広く親しまれています。
このように普段着は日常的に着られることが多い服装となっていますが、イベントや正式な場ではあまり着用されることが無い着物です。
帯の種類について
着物に格があるように帯にも種類があります。それぞれの格に合う帯について紹介します。
袋帯
袋帯は最も格式が高い帯で礼装着に最適な帯となっています。帯の長さは4m、幅は30cmで幅広い帯となっていて、両端が袋状に覆われていることから袋帯と呼ばれています。
丸帯
最も格式の高い帯であり、結婚式や非常に公式な場面で使用されます。丸帯は、帯全体にわたって模様が施されていて非常に豪華な帯です。長さは約4メートル以上、幅は30センチメートル程度で、両面に模様が施されています。礼装着から外出着まで、幅広い格で使用することができます。
兵児帯(へこおび)
兵児帯は柔らかい素材で作られた幅広の帯で、長さは約4メートルから5メートルと長めの帯となっています。カジュアルな帯であるため、普段着や浴衣などの格に適しています。
多様な結び方が楽しめ、装いに変化を加えることができる帯となっています。
まとめ
着物にはそれぞれの場面にあった服装を身に着ける格があり、礼装着は式典や結婚式、普段着は食事会や日常生活など幅広い場面で着物が使われていることが分かりました。このように着物を着る際は格を意識して見分けるようにしましょう。また本サイトでは着物の買取業者も紹介していますので、着物の買取を検討している方はぜひ参考にしてください。