シンプルで多目的に着用できる色無地は、帯や小物使いによって、さまざまな雰囲気を楽しむことができます。
慶事や弔事などのフォーマルなシーンから、お茶会やお食事会などのカジュアルなシーンまで着用できるため、1枚あると重宝する着物です。
しかし、しばらく着る予定がない方や、遺品整理などで処分に困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
多目的に着用できる色無地は中古市場でも需要があり、高値で買い取ってもらえることもあります。
そこで今回は、色無地の買取相場、高額買取のためのコツ、実際に買取に出す方法について解説します。
色無地は多目的に着用できる
色無地とは、白い生地を黒以外の単色で染めた着物のことです。
地紋と呼ばれる織模様があるものも色無地に分類されます。
お茶会で着用する着物として重宝されるほか、七五三や入学式などのお子さまの行事でも着用でき、未婚・既婚問わず幅広い方が着用できる着物です。
ここでは、色無地の特徴について詳しくご紹介します。
色無地の種類
色無地は模様が入っていない単色で染めた着物ですが、地紋の有無や紋の有無など、さまざまな種類があります。
また、日本には四季があるため、着物を使い分けながら季節の移ろいを楽しんできました。
季節によって使い分ける着物は、秋から春にかけて着用する袷(あわせ)・初夏と初秋に着用する単衣(ひとえ)・真夏に着用する薄物(うすもの)の3種類に分けられます。
空調機能が発達している現代では、着用シーズンの長い袷をオールシーズン着用している方もいます。
単色でも上品に見える秘密は地紋にあり
地紋(じもん)とは、布地全体に織り出した織り模様のことです。
単色で染めた色無地でも、光の当たり方により美しい地紋の表情を楽しむことができます。
地紋入りの色無地は礼装用として扱われることも多く、結婚式などのおめでたい日には吉祥文様(きっしょうもんよう)、慶弔両用なら流水や有職文様(ゆうそくもんよう)が生地として使われています。
一方、地紋がないものは、カジュアルな着物として扱われることが一般的です。
地紋がない色無地には縮緬(ちりめん)、一越(ひとこし)、二越(ふたこし)、三越(みこし)などの種類があり、織り方によって生地の風合いが異なります。
紋の数によっては略礼装になる
紋とは、着物の袖や胸などにある家紋のような印のことを指します。
紋には着物の格を位置づける重要な役割があり、紋の数が多いほど格が高くなるのが特徴です。
紋なしの色無地はカジュアルな着物に分類されますが、紋をひとつ入れるだけでセミフォーマルとして着用でき、TPOの幅が広がります。
紋の数と紋が入っている場所、代表的な着用シーンは以下のとおりです。
紋の数 | 紋の場所 | 着用シーン |
5つ紋 | 背中と後ろ袖、胸 | 式典・豪華な披露宴 |
3つ紋 | 背中と後ろ袖 | 格の高い正式なお茶会入学式・卒業式 |
1つ紋 | 背中 | 友人の結婚式・お茶会お食事やお散歩など |
紋なし | なし | お稽古お食事やお散歩など |
高額買取が期待できる色無地の特徴
色無地は紋の数や使用している生地などによって買取価格が変動します。
また、高額買取を望むのであれば、査定時に落款(らっかん)や証紙を提示するといいでしょう。
ここでは、色無地の買取相場、相場より高く買い取ってもらえる色無地の特徴、落款と証紙の違いについて解説します。
色無地の買取相場
紋の数やブランドなどによって変わりますが、色無地の買取相場は、500円から1万円ほどです。
ノーブランド(紋なし) | 500円~5000円 |
ノーブランド(紋あり) | 8000円 |
加賀友禅 正絹 | 1万円 |
有名産地や有名作家が仕立てた色無地であれば、状態が良いもので10万円前後の高額買取になることもあります。
証紙の有無や保存状態によっても大きく価格が変動するため、まずは査定に出してみるといいでしょう。
相場より高く買い取ってもらえる色無地とは
色無地はシンプルでありながら、バリエーションが豊富な着物でもあります。
着用シーンに合った小物がセットで揃っている場合は次の買い手が付きやすいため、買取価格が高くなる傾向があるようです。
しかし、小物が揃っていない場合でも、相場より高く買い取ってもらえることがあります。
ここでは、相場より高く買い取ってもらえる色無地の特徴をご紹介します。
保存状態が良いもの
色無地には模様がないため、汚れやシミが目立ちやすくなっています。
そのため、汚れやシミ、虫食いなどのキズやカビのない保存状態が良いものは、相場より高く買い取ってもらえる可能性があります。
色無地に限らず、着物を保管する際は年に数回は虫干しして湿気を取り除き、丁寧に畳んで「たとう紙」に包み、桐たんすで保管するようにしましょう。
正絹を使用したもの
正絹(しょうけん)とは、蚕が作り出す繭からできた絹糸を100%使用した生地のことであり、シルクとも呼ばれています。
着物一着分の生地を作るには約5000個分の繭が必要です。
繭を作るために相当な手間がかかるため、正絹を使用した着物は大変高価であることが一般的です。
お手入れにも手間がかかり、保存状態の良い正絹を使用した色無地は、高額買取が期待できるでしょう。
安価で購入できるポリエステルやウールなどの化学繊維を使用している着物は流通量が多く、高額買取はあまり期待できません。
身丈が大きいもの
近年、日本人の平均身長が高くなっていることから、大きめに仕立てた着物の需要が高まっています。
具体的には、身丈160cm以上、裄(ゆき)と呼ばれている首の付け根の中心から手首の中心までの長さが67cm以上、身幅63cm前後の着物が近年好まれているサイズです。
サイズが小さい着物は大きくできませんが、大きい着物は仕立て直すことができるため、買取価格が相場より高くなる可能性があります。
有名産地や有名作家のもの
有名産地や人間国宝とされている作家が手がけた着物は、高額買取が期待できます。
色無地はシンプルな着物であり、産地や作家を判断するために落款や証紙の有無が買取価格に大きく影響するため、査定に出す際は落款や証紙を提示しましょう。
しかし、落款や証紙がない場合は買取不可になるということではありません。
作者によっては落款を刻印しない方や、高品質であっても、もともと証紙がない場合もあります。
そういった場合は着物そのものの価値を評価する必要があるため、着物の専門知識や経験が豊富な買取業者に査定してもらうことをおすすめします。
高価買取のポイント
製造年月日が新しいうちに売る
着物は現在も多く新作が追加されている背景もあり、製造年月日が古くなるにつれて買取価格も下がる傾向にあります。未使用のものや、頻繁に使用していないものであっても経年劣化による品質低下により買取査定額も下がってしまいます。そのため、処分を考えている着物をお持ちの場合は、なるべく早く買取専門業者に査定依頼をしましょう。
人気が高い素材の色無地を売る
色無地と一口に言っても、使われる素材はさまざまであり、ポリエステルやウール素材、正絹など多くの種類が存在します。中でも特に人気が高いのが正絹で作られたもので、ポリエステルやウール素材の着物と比べて買取査定価格も高くなる傾向があります。
保管状態に気をつける
保存状態は買取査定金額に大きく影響します。着物の保存状態がよく、傷や汚れ、カビなどのないものは査定額がアップする可能性があります。一方、汚れやカビなどの多いものについては、買取価格が大きく下がったり、最悪の場合は査定金額自体がつかないケースもあります。そのため、着物の保存状態には気をつけて、不要な着物は経年劣化してしまう前に買取専門業者の査定に出しましょう。
買取査定時に証紙を提示する
証紙とは着物の品質を保証するもので、各伝統工芸組合や織元組合が発行するもので、記事の素材や産地、ブランドなど着物自体の品質を記載しているものです。証紙があればその着物が公的に認められた本物であることを証明でき、有名作家が手掛けた着物の場合、買取査定額のアップにつながります。反対に、証紙がない場合は、価値のある着物であったとしても、査定金額が大幅に下がるケースもあります。
サイズが大きい色無地は高価買取の可能性あり
日本人の平均身長の増加による、大きなサイズの着物の需要増加に加えて、大きな着物であれば仕立て直しができるため買取価格が高くなる傾向にあります。一方、小さいサイズの着物の場合、仕立て直しも難しく、限られた人しか着られないため、買取価格として高値はあまり期待できません。買取価格が高くなりやすい着物のサイズは「身丈160cm以上・裄67cm以上・身幅63cm前後」となっており、このサイズ以上のものであれば、買取価格アップの可能性があります。
色無地の売却方法とは
大切にしてきた色無地を売るのであれば、少しでも高く買い取ってもらえるところに売りたいものです。
しかし、着物について十分な経験や知識がない場合、本来の価値よりも低い価格で売却してしまうおそれがあります。
適正な価値を評価して買い取ってもらうには、どこで売却したらいいのでしょうか。
ここでは、色無地の売却方法を3つご紹介します。
リサイクルショップ
リサイクルショップはご自宅の近くにあることも多いため、売却を検討した際に真っ先に思い浮かんだ方も多いのではないでしょうか。
しかし、色無地をリサイクルショップに売却することはあまりおすすめしません。
査定を担当するスタッフに着物の専門知識がない場合、どれだけ価値のある色無地でも適正な価値を評価してもらうことが難しいためです。
フリマアプリ・オークション
お手持ちの色無地を適正な価格で売却したい場合、自分で販売価格が決められるフリマアプリやオークションを利用する方法もあります。
しかし、販売手数料や送料なども考慮する必要があるため、慣れていない方は損をしてしまう可能性も否定できません。
さらに、出品や購入者とのやり取り、梱包や発送も自分で行う必要があり、大変手間がかかります。
出品しても必ず売却できるとは限らないため、すぐに売却したい方にはおすすめできません。
買取業者
お手持ちの色無地の適正な価値を評価してほしい方にも、すぐに売却したい方にもおすすめできる売却方法が、買取業者に売却する方法です。
着物の専門知識や買取経験が豊富な買取業者であれば、落款や証紙のない色無地でも、適正な価格で買い取ってもらうことができるでしょう。
また、店頭に持ち込むことが困難な場合でも、宅配買取や出張買取を実施している買取業者に依頼すれば、ご自宅にいながら査定してもらうこともできます。
まとめ
帯や合わせる小物によってさまざまなシーンで着用できる色無地は、中古市場でも需要があります。
色無地は模様がないため汚れが目立ちやすく、保存状態によっては経年変化も避けられません。
もしお召しになる機会がない色無地がございましたら、お早めに買取業者にご相談することをおすすめします。